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「人間ぎらい」モリエール(あらすじ)主人公の正義とは何だろう?

フランスのモリエールが1666年に発表した戯曲『人間ぎらい』

短く言うと『偽善を憎み、正直・率直を信条とする主人公が、周囲の“空気を読め”、“周りに合わせろ”といった圧力にじわじわと追いつめられ、最後には、住んでいた土地を去る』という物語です。

モリエール ( Molière ) の戯曲『人間ぎらい』( Le Misanthrope )(副題:怒りっぽい恋人)について、あらすじと見どころをご紹介したいと思います。

 

モリエール「人間ぎらい」について

「人間ぎらい」の舞台は日本ではありません。“周りに合わせろ”なんてまるで現代日本のようですが、舞台は17世紀フランスの、貴族の社交界です。

今でこそ、フランス人は、空気を読まないとか、思ったことをはっきり(日本人よりは)言うみたいなイメージがありますが、昔のフランス貴族と言えば、あたりさわりない会話で本音を隠して探り合うのが普通のことでした。

 

権力を持つ者同士が本音むき出しで会話をすると、小さいもめ事も、あっというまに大事件に発展してしまうおそれがあるため、表向きは仲良くしておいて、攻撃したい時はバレないようにやる、というのが常識だったようです。いやなものですね、、、

「人間ぎらい」の主人公アルセストは、そんなフランス社交界における異端児です。貴族であるにもかかわらず、みんながしている上辺だけの会話というものが大きらいです。

本音を隠すことが当然のマナーとされている環境で、本音を隠せない主人公がどんな困難に出会うのか。これは、そんなお話です。

ではくわしく見て行きましょう。

 

モリエール「人間ぎらい」おもな登場人物

アルセスト…貴族の青年。

オロント…貴族。アルセストの友人。

セリメーヌ…若き未亡人。

 

モリエール「人間ぎらい」あらすじ

アルセストは、偽善者を憎み、正直・率直を信条とする青年です。それが行き過ぎて、今や人間そのものが嫌いになっているほどです。

友人のオロントが自作の詩を読んで聞かせると、その場に同席していたフィラントはあたりさわりないコメントをしますが、アルセストは正直にこきおろします。

フィラントは、貴族の世界では、思っていることを何でも口に出すのは良くないことであると言ってアルセストをたしなめますが、アルセストは怒って聞く耳を持ちません。

 

そんなアルセストが今現在恋をしているのは、若い未亡人セリメーヌです。

ですが、彼女こそ、誰にでも愛想をふりまき陰で悪口を言う、アルセストのもっとも忌み嫌う性質を持った女性でした。

ある日、セリメーヌが若い侯爵たちを相手に、他人を嘲笑しているところを目撃して、アルセストは激怒します。

 

さらに、セリメーヌの女友達アルシエノは、いつも男に囲まれているセリメーヌに嫉妬し、その腹いせのために、アルセストに、セリメーヌからオロントに宛てた手紙を見せ、二人の仲を告げ口します。

アルセストはセリメーヌを問いつめますが、のらりくらりとかわされ、うやむやにされます。

 

折しも、アルセストは、さきの詩をめぐるトラブルが原因でオロントから訴えられており、それに敗れたところでした。

アルセストは、もう人間と関わりたくない、人のいない土地で静かに暮らしたいと思うようになります。

セリメーヌを取り巻いていた若き侯爵たちは、セリメーヌの、他の人に宛てた手紙を読んで、自分たちが彼女に愚弄されていたことを悟ると、みな、セリメーヌの元を去って行きました。

 

ただ一人、アルセストだけが、彼女を本当に愛していると言い、一緒に隠遁生活をしてくれるなら今までのことは水に流そう、と伝えます。

けれども、セリメーヌは、まだ年寄りでもないのに隠遁生活なんて冗談じゃない、と、誘いを突っぱねます。

セリメーヌの返事を受け、アルセストは、“この地上のどこかにある、人里離れた場所を探して”、一人、去って行きます。

 

モリエール「人間ぎらい」見どころ&感想

いつ、どんな場所でも自分の正義を貫くアルセストが、愛おしく、また少し悲しい気分にもさせられるのが、この『人間ぎらい』という作品の魅力だと思います。

作者のモリエール自身は、中庸(ちゅうよう)を愛する、飄々(ひょうひょう)とした人物だったようです。アルセストとはずいぶんちがいます。

アルセストは、“場所や相手に関係なくいつも同じ自分を見せる”ことが誠実さの証であると考えます。

 

一方、友人のフィラントは、“場所によって、相手によって、ふさわしいふるまいを選べることが良識というものだ”と諭します。

二人とも他人への誠実さを重視して意見を述べているのに、“何が誠実か”という根本のところですれ違っているため、分かり合えません。

アルセストの周りにいる人は皆、このフィラントのような考えを持っており、味方のいないアルセストはどんどん不利な状況に追い込まれて行きます。

 

それに加えて、アルセストには、偽善や不正に対して“怒る”という傾向があります。

アルセストは、信念を否定されたら、相手が友人だろうと容赦なくひどいことを言います。

たとえばフィラントと言い合いをした際には、「ぼくがきみの親友?その友人名簿から抹消してもらおう」と言い放ちました。

 

アルセストの“怒る”シーンはどれも見ごたえがあります。

怒りにはその人の信念が表れますから、感情移入しやすいということももちろんあります。ですが、この『人間ぎらい』の場合は、ちょっと特殊です。

というのも、主人公がとても怒っているにもかかわらず、周りはいまいち、なんで怒っているのか理解できない、、、という事情があるんですね。

アルセストの正義感が理解できないので、怒られている人は“そんなに言うほどのこと??”というリアクションになってしまうのです。

読んでいてそれが悲しくて悲しくて、、、

 

“怒り”のような強い感情をないがしろにされるのって、大人でも子どもでも、とてもつらいものです。

アルセストの悲しみが、孤独が、読んでいるこちらにまで流れ込んでくるようで、せつない気持ちになりました。

 

1666年の初演の際には、結末の後味の悪さから、一部の専門家の間では認められたものの、一般の観客には不評であったと言われています。

しかし、主人公アルセストの、“憂いを帯びた怒りっぽい性格”という秀逸なキャラクター描写や、当時の上流社会を精確に写した風俗描写が評価され、現在では、世界中で愛される戯曲作品の一つとなっています。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。モリエールの戯曲「人間ぎらい」についてご紹介してきました。

コミカルな人物描写に加え、会話文のみでテンポよく進んで行きますので、とても読みやすい作品です。

電車や新幹線などの、ちょっとした移動時間に読む本としてもちょうど良いなと思いました。ご関心に応じてぜひどうぞ。

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